「やさしい現実」シリーズ第5弾をお届けいたします。
あなたがここへたどり着いたのは何を探していたからでしょうか。現実が厳しいと感じたからでしょうか。現実はわたしたちが思っているよりも優しいものです。
でも、何か思い通りにならないと思うことがあるなら、それは現実と戦っている証拠です。現実と戦えば必ず負けます(バイロン・ケイティ)。
この記事との出会いが、あなたにとって現実と戦わずにあなたの大事な人生を大切な人々と豊かで穏やかなものとして生きていくヒントになればうれしいです。
今回は交流分析をやさしい現実との向き合い方の一つとして紹介します。
交流分析
交流分析は心理療法の一つで、いわゆるカウンセリングや心理療法以外にも、家庭や会社や学校での人間関係の改善や自己実現のためのツールとしても応用されています。
専門家なしでも自分で応用できる部分があり、気軽に試せる心理テストのようなものでもある点で、学界からは一時期批判的にみられたこともあったようです。でも、入り口のわかりやすさから軽い気持ちで入ってみると、その洞察や分析の奥の深さや広がりにびっくりするような理論だと思います。心理テストのような面と、深い洞察としっかりした研究と数多い臨床経験に裏打ちされた理論を同時に持ち合わせていて、非常に面白い立ち位置の心理療法だと思います。
これまでのやさしい現実との向き合い方で紹介してきた中では、ジル・ボルト・テイラーの「脳の中の4つのキャラ」やリチャード・C・シュワルツの「パーツ」のように、「別々の自我状態」を扱いながらも、バイロン・ケイティーやアニータ・ムアジャーニと同じようにどの自我状態のことも別々の人格としては扱わず、かといって彼女たちのように思い込みに気づくよう促すこともしません。
では、交流分析ではどのように現実に向き合う力を与えてくれるのでしょうか。
結論からいえば、実践です。つまり、今まで前に出ていた自我状態ではない自我状態で現実に対応してみる、というだけです。
例えば、相手と毎回ケンカになってしまったり、相手を言い負かしたはずなのに後味が悪かったり、相手のわがままを我慢して不満が自分の中で膨れ上がったりしている関係性を、通常の精神分析やカウンセリングのようにその原因は一切追究せずに、ただ「違う結果を得る」という目的のために、違う自我状態を前に出してパターンを変えてみようというのが交流分析のメソッドです。いつも「でも」と言ってしまっていたけど、今回は「そうかもしれないね」と別人格になって答えてみるといった形です。
自我状態を知り、交流のパターンを学んだら、パターンを思い出していつもとは違う自我状態を前に出してみるだけで、「交流(コミュニケーション)」の変化を実体験できます。そのための準備が「分析」です。「個」を取り扱わずに「交流」を取り扱うわけです。そこには問題も原因も加害者も被害者もなく、パターンがあるだけです。
交流分析そのものについての詳しいお話は、上述の通り非常に幅広く奥が深いため、Wikipediaの「交流分析」、日本交流分析学会の「交流分析とは」、本交流分析協会の「交流分析(TA)とは」などを参照していただくとして、さっそく本題に入ってみます。
コミュニケーションのパターンを変える
まずは交流分析の自我状態について知っておきましょう。
交流分析の自我状態(パーツ・キャラ)
交流分析では、個人の中に5つの自我状態があるとしています。
基本は「親」「子」「大人」で、「親」と「子」は2種類に分けられます。
- 親(Parent: P)
- きびしい親(Critical Parent: CP)
- いい面:理想、良心、秩序、道徳、責任
- 悪い面:偏見、批判的、支配的、排他的、独断的
- やさしい親(Nurturing Parent: NP)
- いい面:認める、共感、保護、育成、同情、受容
- 悪い面:過保護、過干渉、押し付け、自主性を育てない、甘やかす
- きびしい親(Critical Parent: CP)
- 大人(Adult: A)
- いい面:理想的、合理性、冷静沈着、事実、客観的
- 悪い面:機械的、打算的、無味乾燥、無表情、冷徹
- 子ども(Child: C)
- 自由な子ども(Free Child: FC)
- いい面:天真爛漫、好奇心、直感的、活発、創造性
- 悪い面:自己中心的、わがまま、傍若無人、動物的、感情的
- 従順な子ども(Adapted Child: AC)
- いい面:協調性、妥協性、聞き分け、従順、慎重
- 悪い面:遠慮、依存心、我慢、自主性欠如、敵意
- 自由な子ども(Free Child: FC)
どの自我状態がメインなのか知る
次に、エゴグラム(機能分析)と呼ばれるテストを受け、自分の性格特性とエネルギー量を知りましょう。エゴグラムのテストはネットで検索すると無料で受けられるものがいくつかありますので、信ぴょう性の高そうなものを選んでやってみるといいと思います。
エゴグラムで一番高く出た自我状態はストレス下や問題が起きた時に最も反応するエネルギーの高いメインの自我状態です。
ちなみにわたしはNPとAとFCがとても高く、CPが普通でACが低めです。人当たりがよく朗らかでおっとりしているので人間関係はおおむね良好ですが、ACが低いためにマイペース過ぎて集団行動に向きません。
協調性がなくて集団行動ができないのはそれほど気にならないのですが、CPは普段から意識して高くするようにしています。それは共依存にならないため、さらにいえば自分が勝手におせっかいしたくせに後になって相手に恨みを抱えないためです。NPが高すぎておせっかいババアになり、FCがいいアイディアを思いつき、Aが裏付けを探して確信したら、相手の気持ちを考えずに「こうすればいいよ」とアドバイスし、できないとなればNPが代わりにやってあげてしまって、相手が自分に依存してしまうと嫌になる、ということを繰り返してきたので、CPが「基本的に人間はみな自分のことは自分で責任を取るべきだ」とか「いい加減にしろ」とか「けじめをつけろ」などという厳しい態度を自分にも他人にもとってくれると、他人との間に境界線が引けてむしろ人間関係が楽になることを知りました。
わたしの話はさておき、今回の肝に入ろうと思います。交流分析では前述のとおり、いろいろな分析をします。脚本分析やゲーム分析などいろいろな分析をしますが、わたしが非常に実践的で画期的だと思ったのは、「やりとり分析」です。これはジル・ボルト・テイラーの脳の作戦会議(「B-R-A-I-N」Huddle)に近いメソッドではあるかと思いますが、下に示したような図解で関係性における葛藤の原因となる自我状態のやり取りが可視化されるので、葛藤のないやり取りを選ぶことで葛藤を減らします。この場合、フォーカスしているのはやり取りのパターンです。
脳の作戦会議は脳の作戦会議は、Breathe(深呼吸)→Recognize(4人のキャラクターを認識する)→ Appreciate(思い込みやパニックを起こしているキャラクターにそこまでのところをなんとが頑張ってくれたことに感謝する)→Inquire(最適な次の手が何かを全員に問う)→Navigate(新たな現実に全員でチームとして進んでいく)というプロセスで行いますが、フォーカスしているのは自分の中のキャラ達です。
やり取り分析
詳しく図を用いて説明します。
やり取り分析では、相手と自分の自我状態の反応を「相補的」「交叉的」「裏面的」のパターンに振り分けます。それぞれのパターンの特徴や会話の例を挙げて説明してみます。
相補的交流
相補的交流では、非常に気持ちよく会話ができます。

AとAの会話
自分のA「今日は初日で疲れましたね」
相手のA「そうですね、初めてのことは疲れて当然ですから、明日はもう少し楽になるでしょう」
自分のA「そうですね、今日はお互いゆっくり休みましょう」
NPとFCの会話
自分のFC「なんか今日はめっちゃ疲れた〜」
相手のNP「そうだね、今日は初日だったから緊張しただろうし、明日のこともあるから早く帰っていいよ。あとはやっておくね」
自分のFC「やった〜!ありがとう」
交叉的交流
交叉的交流では、発話者の期待を裏切る反応が返されるため、気分が悪い会話しかできません。

AとCPの会話
自分のA「今日は初日のせいか思いの外疲れましたね」(期待はAでお互いを労いあうこと)
相手のCP「初日が疲れることぐらい覚悟してきたらいいんじゃないですか?そんなことで明日までもつんですか?」
自分のA「すみません…」
FCとCPの会話
自分のFC「疲れた〜!早く帰ってゆっくりしたいね」
相手のCP「こっちだって頑張っているんだから、自分だけ疲れたように言わないで欲しいんだけど。早く帰りたいんだったらもっと積極的に動いたらどう?大体帰ったらゆっくりしてる暇なんてないんじゃないの?明日も作業は続くんだから明日のために一刻も早く寝るべきだよ」
自分のFC「え〜」
裏面的交流
裏面的交流では裏の意図が隠れている会話で、気が付かなければ一体何だったんだろうという気分が残ることもあり、気がつけばはっきり言ってもらえないことにモヤモヤする会話です。

A(CP)とAの会話
自分のA「今日は初日だから疲れましたね」
相手のA(CP)「そうですね、明日もありますから一刻も早く片付けて、早く帰って、明日またよろしくお願いします」(内心では交叉的交流のCPと同じことを言っており、相手にACで対応してもらうことを期待している)
自分のA「では無駄話はやめてさっさと片付けにかかりましょう」(なんかちょっと上から目線だなと感じている)
別の自我状態で話してみる
これらのパターンを認識したら、相補的に反応できる自我状態で話してみることで、いつもうまくいかなかった人間関係のコンフリクトを脱することができるというのが「交流分析」です。
目的は人間関係のコンフリクトを脱することなので、わかってもらえなかった気持ちの解消はできません。そういう気持ちを抱えながら、相手に自分の言い分をわかってもらうこと、期待した会話を返してもらうことにこだわるのをやめるのはなかなか難しいものです。
でも、このこだわりを一度だけでも手放して、相補的交流を選んでみるとびっくりするような反応が返ってくることがあります。副産物として何が出てくるかはやってみないとわからないというのがこの交流を変えることの醍醐味でもあります。
この相補的交流のために自我状態を選ぶという行為は、それによって相手を変えてやろうという意図がある場合は、単なる裏面的交流となってしまうだけなので、お互いの関係性には何の変化ももたらしません。
ただ単純に一瞬でも自分の心の平和を保ちたいと思ったなら、その瞬間に、こだわりを抱えている自我状態にはちょっとの間だけでも後ろに下がってもらって、相手の自我状態と相補的に交流ができる自我状態を選んでみてください。
問題とは理想と現実の差のことです。交流パターンを知り、相補的交流のための自我状態を選んだだけで、現実がちょっとだけ優しく見えてくるかもしれません。
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