壮大な問題に取り組む(前編)

壮大な問題に取り組む(前編)

この活動のきっかけ

私には尊敬している、考え方を参考にさせてもらっている方がいます。心理学をもとにしたセルフマネジメント術などを伝授したり、企業や自治体で合意形成のファシリテーターを務めたりしている枝廣淳子さんという方です。

枝廣さんはゴア元副大統領の『不都合な真実』を翻訳した翻訳家であり、『朝2時起きで、なんでもできる!』『レジリエンスとは何か』などの著作の著者であり、環境ジャーナリスト、有限会社イーズの代表取締役、有限会社チェンジ・エージェントの会長、幸せ経済社会研究所の所長でもあります。そして、教育心理学の心理学者でもあります。

枝廣さんを知ったのは、私がソーシャルビジネスをやりたいと考えて動き始めたころのことでした。私にとっての大きなテーマは「サステイナビリティ(持続可能性)」と「幸福」でした。これは、私自身がNGO団体でインターンをやる前から念頭にあったテーマであり、インターンをやってみてさらに切実に感じたテーマでした。どこを切り取っても私にはこのふたつの事柄に思いや考えが戻る上、どうしても行き当たるので、自分が一番情熱をもって取り組める「ジェンダー」に関することと「サステナビリティと幸福」をソーシャルビジネスとして組み立ててみようと考えたのでした。

サステイナビリティと幸福というテーマについては別途述べる機会を作るとして、枝廣さんという存在との出会いに話を進めます。

まずはインターネットで検索しました。検索した用語は「経済」と「幸福」で、ぴたっと幸せ経済社会研究所のホームページに行き当たりました。私はホームページの隅から隅までを読み、関連する人たちのホームページやYouTubeの動画を閲覧し、枝廣さんの著書を何冊も買って読み漁りました。

枝廣さんの著作を通して感じたのは、論理と感情がケンカせずに手に手を取って淡々と問題解決という目的に向かって進んでいく感覚でした。理屈として筋が通っていて冷静なのに、感情が無視されていなくて暖かい、バランスが取れた心地の良いものでした。それはあまり刺激が少なくズバッと答えをくれるようなものではなく、そういった意味では面白みはないのかもしれませんが、私にはスッと納得のいく感覚がありました。その奥義に興味のある方はぜひ枝廣さんの著作を手に取って読んでみてください。

直接その考えに触れたくて、枝廣さんの会社が開催している読書会に参加してみましたが、錚々たるメンバーで気が引けました。次にセルフマネジメントのセミナーに参加して、実際にお目にかかって指導していただく機会を得ました。

参加したのは一泊のセミナーで、枝廣さん直伝の「やりたい」を「できる」にする方法や考え方を学びました。その中で私が「やりたい」とあげていたのがこの活動とアプリ開発でした。

そのセミナー参加中の計画では、転職して働きながらアプリ開発を行う予定で「やりたい」を実現するつもりでいましたが、結局は転職すらやめて退職し、資金ゼロでクラウドファンディングを決行してiPhone用アプリを自分でプログラミングして共依存関係脱出応援アプリPom Squadを開発販売しました。

余談ではありますが、クラウドファンディングを開始した時に真っ先にご支援してくださったのが枝廣さんだったというのも、クラウドファンディングのキュレーターを務めてくださった方が後日転職なさったのが枝廣さんが会長を務める会社だったというのも、不思議なご縁を感じるものではあります。

環境問題と世界経済

わたしが枝廣さんの環境問題の取り組み方に学んだことのひとつには、壮大な計画を立ててもいいのだということでした。自分が生きている間に結論が出なくても、何百年先に目的のものが実現するための一歩はいつでも踏み出すことができ、何百年先の実現した世界のためには今すぐ始めれば1日でも目標達成が短くなるのだということ。

環境問題は通信課程で履修している大学の科目でも学ぶ機会を持ちました。環境と経済は大きく関係しています。いわゆる環境破壊という経済成長が環境に与えた影響だけでなく、どちらも人間の幸せに関与するものです。

枝廣さんが取り組んでいる環境問題は、例えば屋久島に残っているような、何百年もかけて立派な1本の木になる木のために今日苗を植え、育つ環境を整え、世代を超えて守り続けるというようなことです。その木が立派な木に育ったのを私たちは見ることはありません。

私たちが生きていくのに必要だと考えている貨幣流通に頼った経済活動は、すぐに結果を出すことが求められています。今払った資本を少なくとも一年後には回収でき、余剰分を得ることを期待されています。

しかし、私たちが生きていくのに必要な土壌問題、紫外線問題、洪水問題、有害物質問題、エネルギー問題などは、自然界のサイクルに依存しており、そのサイクルは1ヶ月という単位ではなく、少なくとも数十年、長いものでは数千年というサイクルを持っています。

そして、前述のような成長するのに数百年を要する木が育つ環境を整えるというのは、例えば温暖化の人間由来の原因を何とか減らす試みであったり、そのための経済活動の見直しであったり、それによって経済的な損害を受けるかもしれない関係者との話し合いであり、実質的な解決策と関係者の幸せについての配慮でもあるわけです。

そして、その一本の木が何百年後に立派な木となっているということは、何百年後のわたしたちの子孫が、私たちが受け取っているような、自然の中で背の高い木を見上げて深呼吸して幸せだと感じるようなものを、バトンタッチしていくような活動であるわけです。

資本主義経済の中で、そのいいところは残して、何とかまずい方向へ走っていっている部分を是正しつつ、そうすることで損害を受けるかもしれない人たちに損害を極力減らす知恵が必要となります。

もし、今の世界経済の仕組みで恩恵を受けている人がいる中、環境問題のために恩恵を受けるのをやめろとするならば、それは経済活動のために環境をないがしろにせよというのと同じくらい乱暴な理屈になってしまいます。

消費経済社会は短いサイクルで生産して消費して利益をどんどん生まないと倒れてしまう仕組みで動いています。倒れないために巨大な会社がグローバル化し、合併吸収してさらに巨大化しています。その中で小さな声はどんどん届かなくなっていますが、環境問題も待ったなしで危機状態を呈しているように思います。

「環境問題は経済問題と絡んでいて、あちらを改善すると意外なところにしわ寄せがいく、まるで巨大なスライドパズルのようなものだ」と環境問題の授業で教わったのを印象深く思い出します。

環境問題と経済問題の「利害を超えた、実質的で納得のいく解決」を目指すというのは本当に気の遠くなるような壮大な問題ですね。

次回は私が取り組もうと決心した「差別問題」についてこの続きと結論をお送りいたします。