ステレオタイプの日本女性「大和なでしこ」のイメージといえば、おしとやかで清楚だけど芯の強い女性ではないでしょうか。そういう女性は男性からモテるようですし、同性からも好印象を得るといって反論する人はほとんどいないのではないでしょうか。
大和なでしこはコミュニケーション上手
大和なでしこはおしとやかですがおとなしくはありません。芯は強いですが強いだけでもありません。
強いだけの女性像は「私が、私が」と人の話をさえぎる「出しゃばり」や、文句ばかり言ったり人の批判ばかり言ったりしているイメージ。従順なだけの女性像はみんなにいい顔をする「八方美人」や、できるのにできないふりをしている「ぶりっ子」。
芯が強いというのは、納得しないことには「ノー」といえること、不当な扱いには不快感を伝えられることから受ける印象です。おしとやかというのは、相手のことを思いやること、相手の話をちゃんと聞けることから受ける印象です。
上手なコミュニケーションの方法
では、上手なコミュニケーションとはどんなものでしょうか。
心理学の行動療法に「アサーション」という考え方があります。要約すると自分も相手も尊重したうえで上手に自己主張をするという考え方です。
アサーションでは、コミュニケーションの方法を3種類に分けて考えます。
- アグレッシブなコミュニケーション:怒りをあらわにして権利を要求する、脅す、無視する、暴力に訴える
- ノンアサーティブなコミュニケーション:気持ちも考えも黙って飲み込む、かぶる、我慢する、あきらめる
- アサーティブなコミュニケーション:穏やかに相手の立場を認めたうえで、自分の気持ちや考えを伝える
アサーティブなコミュニケーションができるのが大和なでしこです。
アグレッシブなコミュニケーションが強いだけの女性像、ノンアサーティブなコミュニケーションが従順なだけの女性像です。
アサーティブなコミュニケーションをするには4つの考え方とスキルを身に着けます。
1. 基本的アサーション権を知る――あなたにも生まれ持った自由がある
アサーションはアメリカの黒人の市民権運動やウーマンリブ運動を背景に発展してまとめられていった考え方です。そのため、どんな人にも「罪悪感を持たずに依頼を断る権利」、「過ちをしてそのことに責任を持つ権利」、「自己主張をしない権利」など100以上の「基本的アサーション権」があるということを知ることが大切だと考えます。
自分だけでなく「自分を含めたすべての人」に生まれ持った「基本的アサーション権」があるということです。権利というと仰々しい感じがしますが、権利を自由と言い換えると受け入れやすいかもしれません。
誰でも罪悪感を持ったり、自分勝手なのではないかと心配したりしないで断ってもいいのだと知っていればお断りの言葉を口にしやすくなると思いませんか?
2. 自己信頼を持つ――等身大のあなたはどんなでしょう
暗い夜道を一人で歩いているときに、何かが動いてぞっとしたことはありませんか?
よく見てみると猫だったりして「なぁんだ!」とほっとしたなど、正体がわからないときは必要以上に可愛い猫ちゃんにまで警戒するものですよね。
私たち人間は正体がはっきりしないものは自分自身のことでも怖くて目を背けがちです。
理想の女性像に縛られて、ありのままの自分の姿を「おそらく程遠いだろう」と過小評価していることもあるでしょうし、逆に過大評価していることもあるかもしれません。
でも、上手な人間関係を築いていくためには、自分の知りたくないことをきちんと知る必要があります。自分の悪いところを責めるためではなく、「今の自分」が「過去の自分」を分析して、「未来の自分」のために対策を立てるためです。これがきちんとできれば、自信につながり、自分に対する信頼が増します。
言いにくいことを上手に言えるようになったら、どんなに人生が楽になることでしょう。
3. 非合理的な考えを検討する――その考え方は誰のためになりますか
例えば、生まれ育った家庭によって未来の可能性は決まっていると思い込んでいれば、努力は意味のないものとなります。
非合理な考えも前出の未知への恐れと同じく、生きるための知恵として習得したものなのですが、その思い込みで相手を決めつけてしまうならアサーティブなコミュニケーションはできません。相手を尊重しながら自分の気持ちを期待せずに伝えることがアサーティブなコミュニケーションですから、「そんなこともできないなんて、どんな育てられ方したの?」というのではなく、「初めてならできないのは当然だと思うけど、できると思ってたからちょっとびっくりしちゃった」などのように伝えます。相手の立場に立てば、後者のように言われたほうが聞く気にもなりますよね。
思い込みを押し付けるのは喧嘩を売っていることになりかねません。相手を傷つけて無事でいることはできませんよね。情けは人の為ならずってことでしょうか。
4. スキルを身につける――相手を立てつつ期待せずに気持ちを伝える訓練
とはいえ、常識だと思い込んでいることを瞬時に「これって思い込み?」と疑って相手の立場に立って理解を示しつつ、気持ちを伝えるのは難しいことです。しかも、相手が「そんなこと言って、結局は思い通りにしようとしているに違いない」と受け取られるようなら、アサーティブなコミュニケーションは失敗です。
残念ながらこれは一足飛びには身につかないようで、スキルが身につくまで失敗しながら続けることしかないようです。
アサーショントレーニングをやっているグループなど、探すとたくさんあります。お近くの気の合いそうなグループに参加してみると良いかもしれません。
また、これは私見なのですが、実地のトレーニングもさることながら感覚的に理解することも必要なのかなと思います。私はこの「期待しないで気持ちだけ伝える」という感覚がどうしてもわからなかったので。
毎日暑い日が続いていて、誰にでもなく「暑い、暑い」と口にしていることに気が付いた時、幸いなことに「これだ!」と気が付くことができました。暑いときに暑いといったところで何の変化もないことは明らかですが、暑いと言わずにいられない…。「寂しい」「悲しい」「うれしい」「楽しい」なども表現していいのです。
さて、言われたくないことを誰かに言われたときに、さらりと「あら、〇〇さんにそんなこと言われたら、なんだか悲しくなっちゃいます」なんて言えたら素敵な大和なでしこになれそうですよね!
あとがき:
先日NPO法人レジリエンスの「心のCare講座」に行ってきました。アサーティブなコミュニケーションはDVやモラハラをする方には通じませんということでした。共依存関係脱出アプリを作っている関係上、脱出中の方も読む可能性を考えて、この注意を書いておく必要があると思いました。でも、私をはじめ共依存になってしまいがちな方々の中にはノンアサーティブなコミュニケーションをしてしまいがちな人が多いだろうとは思います。そういった方々のお役に立てればと願います。